2013年12月28日土曜日

教師はなぜ自宅から年賀状を送らないのか?

今年も年賀状の季節が来ました。
クラスの子どもたちのためにせっせと書いている先生方もきっとたくさんおられることでしょう。

私も通知表と事務処理が終わるこの年末ギリギリから、子どもたちへの年賀状を書き始めます。

別に書かなくてもいいのですが、普段、頻繁に学級通信を出したり、きめ細やかな対応ができていない身としては、年賀状くらいは出してお茶を濁そうというわけです。

「明けましておめでとうございます」と書いてもいいのですが、私はいつも学級通信の一つとして新年の挨拶は抜いています。別に信念があるわけではなく、ただ、なんとなくです。
「宿題は順調ですか?」というような感じで。


しかし、困ることがひとつあります。差出人住所です。

年賀状を書くことが習慣になっている子や書くことを楽しみにしている子は聞いてきます。

「先生、年賀状出すから、住所教えて」

しかし、私は教えることができません。昨今の個人情報保護法の問題や教師と保護者とのトラブル増加を受けて、私の勤務する教育委員会から「自宅住所は子どもや保護者に教えない」という指導があったからです。

つまり、私は、
差出人住所は学校にすべきか?
それとも自宅にすべきか?

と悩むまでもなく、差出人住所を学校にしなければならないのです。

「先生に出す時は、学校に送ってくれたらいいよ」
と答えるしかないのです。

・・・しかない、というくらいですから、本当は自宅住所で出したいのです。なぜなら、子どもたちは、「学校に出してね」と私が言ったら、決まったように残念な顔をするからです。

たった一枚の紙がであっても、自分の手で書いたものがお正月に遠くにいる相手の手に渡る。
子どもたちは、それを楽しみ、またそれに魅力を感じているようで、宛先が学校ではそんな年賀状の魅力が なくなってしまうように思うのかもしれません。

先生のお家に送りたい、年賀状を書くことを楽しみにしている子はそう思っている子が多いです。

思えば、教師と子どもの関係は不思議です。
子どもは教師にとって、教育という行政サービスの受け手であっても、客ではありません。塾や習い事の先生とは違います。

完全に仕事同士の付き合いであるならば、仕事場同士で年賀状をやりとりすればいいのです。会社勤めをされている方はきっとそうでしょう。

しかし、教師は仕事ですが、子供の個人情報をかなり知っています。住所や電話番号はもちろん、家族構成や親の勤務先まで。

一方で、子どもたちや親たちは、教師の個人情報を名前以外は知らないのです。

教師と子どもの関係は情報だけを見てもこんなに変わっています。

客でもなければ、友だちでもない、親でもなければ、近所づきあいでもない。
その関係は教師と教え子と言うしか言いようがないのです。

かつては、教師も子どもたちに住所や電話番号を教えていました。私も昔、先生に年賀状を出しましたし、今でも出し続けています。

それは、先生が住所を教えてくれたからです。
住所を教えてもらったからといって、いきなりみんなで先生の家に押しかけるようなことはしませんでしたし、親たちもクレームを言いに行ったりもしませんでした。

どうやら、今は、そうではないらしいのです。教師が個人情報を子どもに教えるということは、そういう危険をはらむ世の中であるらしいのです。

したがって、現代の、この情報公開の不均等が如実に表れるのが、この年賀状の季節なのです。

私は年賀状くらい、個人でやりとりしたいと思っています。年賀状は本来、私信であるからです。

せっかく私に年賀状を書こうと思ってくれる生徒の年賀状なのですから、学校ではなくて、自宅でもらいたいなあと思います。

どっちでもいいじゃないかと言う人もいるでしょう。

でも、かつて好きな先生に年賀状を送り、今でも20年以上に渡って年賀状を送り続けている私としては、学校以外に先生と繋がる方法があることが嬉しかったですし、先生が家で読んでくれたんだと思うと書いてよかったなあと思っていたような気がします。

先生に出す年賀状は、子どもにとって、初めて目上の大人に出す年賀状です。
であるならば、ちゃんと受け取りたいと私は思うのです。学校あての住所ではなく、自宅の住所で。

私宛で。

つまらないことかもしれませんが、毎年気になります。