2015年10月26日月曜日

教師はなぜ異動するのか?

実は私は、今年から新しい学校に勤めています。半年前の年度末、人事異動があったわけです。ようやく気分も落ち着いてきたので、異動について書いてみます。

みなさんも思い返せば、新しい先生が来たり、自分がお世話になった先生が去っていったり、そんな先生が学校を変わる場面を少しくらいは覚えているはずです。

私の勤める自治体では、教師の異動は基本的にその自治体内=管内を出ることはありません。
自分が望めば別です。

また、都道府県や政令指定都市レベルで異動しようと思えば、面接などの試験を受け直す必要もあります。

しかし、特別な異動願いを出さないかぎりは、自治体内での異動となります。

私の自治体では、だいたいですが5年〜10年くらいで教師は学校を変わります。

隣の学校に移ることもあれば、遠くの学校に行く場合もあります。自治体によって様々なようですが、

・学校を指名して希望できる自治体

・地域の希望は出せる自治体

・異動命令を受けるだけの自治体

など、ところ変われば事情が変わります。

ちなみに、私の場合は、「地域を希望する」でした。

私は電車通勤が希望でしたので、沿線を希望し今の学校へ移りました。希望は通ったと言えば通ったのですが、駅から歩くには遠いため、駅に自転車を置いています。

最初、年度末に自分の転任先聞いた時、そこには知り合いがいませんでしたし、良くない噂も耳にしましたので、不安が重なりましたが、よくよく考えれば新任のときにはそもそも何も知らなかったわけで、「なんとかなるか」と、思い直すことにしました。

しかし、ここでもし、自分の転任先がどうしても受け入れられない場合は、教育委員会へ赴いて申し立てをすることもできるとか…
(また組合に所属する教師は組合を通して変更希望を出すこともできるとかできないとか…)

というわけで、申し立ても何もせず、「置かれた場所で咲きなさい」のごとく、今の学校へ移ってまいりました。

知り合いがいないことも、風の噂で聞いたことも全くの杞憂で、慣れないながらもなんとかやっています。

(ブログの更新が遅いのも、こんな適応期間だからと思っていただければ…)

しかし、同じ市内とはいえ、学校が違えばやり方が違う、ということがたくさんあって、自分が慣れていないものですから、ついつい

「なんでこんな面倒なことをするのか」
「前任校のやり方の方がいいなあ」

なんて、文句ばかりが浮かんでくるこの半年でした。

ここで、ハッと気づいたわけです。
なんで教師は異動するのか?ということを。

ずっと、疑問がありました。
子どもにも、親御さんたちにも評判がよく、また教師の中でも信頼を集める先生が移動してしまうことは、学校にとっては損失であろうし、行政としてもロスが大きいにでは?と。

(私は親御さんから電話やアンケートで苦情をいただくことも多々あり、決して惜しまれるような教師ではありません)

新年度に転任した教師が元の学校へ挨拶に来る機会があるのですが、そのときに本来は参加できないはずの親御さんたちが来られて、学校の玄関や駐車場でお世話になった先生に挨拶をしている場面を何度も見てきました。

(自分もいつかはそんな教師になりたいものです)

しかし、教師がある程度の一定期間をもって、市内や区内の学校をぐるぐる異動することは、公教育としては大きなメリットがあります。

それは、学校の質を平均化する、ということです。

人事異動の度に、教師はその学校で学んだノウハウをもって次の学校に移ります。それが双方向に、いや網目状に行われます。

毎年人事異動があることで、あらゆる学校がノウハウを輸出する一方で、多数のノウハウを輸入することになります。

これは、ひとつの学校が突出する足かせにもなるでしょうが、ひとつの学校が取り残されることも防ぎます。

住民のみなさまに等しく公共サービスを提供するシステムとしてはよく出来ていると言えるかもしれません。

しかし、です。

その弊害もまた教師を苦しめます。

学校とは毎年同じような行事を多少の改善を加えながら、毎年同じようにやることを期待されていますから、もしメンバーがあまり変わらなければ、暗黙の了解でどんどん進めることができるかもしれません。

しかし、毎年メンバーの3分の1が入れ替わるとしたら、毎年同じ説明をして、全員が理解する必要があります。

これが職員会議を長くしています。

また、教師がころころ入れ替わること、ひとつのプロジェクトが進みにくいのは否めません。担当が変われば、やり方も変わります。これはもっとも、学校だけでなく、公共サービス一般に言えることかもしれません。

さらに、業務引き続きの多さも年度末や新学期を忙しくさせ、引き継ぎ資料がまるで毎年の地層のように積み重なります。

新しい担当者は、果たしてそれをどう使うのやら、また捨ててもいいのやらわからずに、持ち続けるのです。

そしてまた、自分が資料の地層をさらに分厚くして次の人へ渡すことになります。

・・・と、いけませんいけません。つい、文句ばかりが口を出ます。

経験を積んで異動することは良いことです。自分は柔軟になりますし、別の視点を持つことにもなります。

なれない日々ですが、楽しく頑張ります!

2015年10月10日土曜日

教師の宴会はだれが払うのか?

夏休み前に書いたきり、運動会が終わるまでサボっていました。今年はサボりすぎです。
毎日、働いていると、これも書きたいなあ、あれも書きたいなあと思うのですが、思うだけで行動ができません。
そう思っているうちに、思いついたネタが頭をすり抜けていくのです。

今年度も半分終わりました。
後半、頑張ります。


さて、教科書もだんだん下に変わっていくこの頃ですが、気楽に

「教師の宴会」

について書いてみようと思います。

サラリーマンからの中途組の私としては驚くことも多かったので、教師ではないみなさんが読まれたらきっと新鮮に思われるのではないでしょうか。

また教師のみなさんでも、うちの地域は違うよ、なんてことを思いながら読んでくれるかもしれません。


まず、普段の「飲み」について。

これはあまりサラリーマンのときと変わりませんが、教師ならではとして、

「飲むなら自分の学校の校区は避けようか」

ということがあります。

保護者や子ども、教え子たちの目があるところでは落ち着いて飲めないわけですね。繁華街に近い学校はそうも言ってられない面はありますが。

私も何度か飲んでいる店で保護者や子どもに会ったことがありますが(最近は居酒屋で家族の夕飯をすることが増えているんですかね?)、みなさん知らぬ顔をしてくださったり、目配せ程度でそっとしておいてくださます。ありがとうございます。

もちろん、地域が違えば校区内で保護者の方々と仲良く飲んでいる先生もいらっしゃると思います。

「昔はお父さんお母さんとよく飲みに行ったもんよ」

なんて、もう引退されたある先生から聞かされたもんですが、現在では私の周りでそんなことをされている先生は知りません。

よっぽど信頼関係を築かれているのではないでしょうか。

思えばサラリーマンのときは、会社のそばでばかり飲んでいました。わざわざ離れて飲むなんてことはありません。
ただ、得意先のそばに出かけて行って飲むなんてこともありませんでしたから、やはり仕事のお付き合いとお酒は分けていると言えるのかもしれませんが。


さて、そんな校区を避けて羽を伸ばす教師ですが、公務員だからなのか、役職がないからなのか、「おごる」文化があまりありません。
(私の周りだけですか?)


サラリーマンの頃は、私も駆け出しだったため、部長や課長はもちろん、係長やさほど歳の変わらない主任にまでよくおごってもらいました。

私は誘われて飲みに行くわけですが、イヤな付き合いでもないし、仕事の説教も演説もありません。

それでも若輩だった私は上司や先輩と飲みに行って自分が払った記憶がほとんどありません。
もちろん、会社によるのかもしれませんが。

一方で教師はというと、いつも割り勘です。

20代と50代が同じ場にいてもだいたい割り勘です。中には

「おれが一万円出すから、あとは君たちで割って」

なんていう方もいらっしゃいますが、たいていはみんな同じように頭割りします。

ただ年齢に関係なく、教頭校長になると多めに出してくれます。
(公務員は年功序列のため、役職手当なんて微々たるもので年配のヒラ教師の方が給料が多いなんてことはザラです)

私は教育現場に入ったときは、もうそれなりの年齢でしたが、新人の先生たちと飲みに行っておごろうとしても

「いやいや、そんなわけにはいきません!」

と何度も断られました。

今ではすっかり自分がおごろうなんて意識はすっ飛んでしまいました。自分が若い頃はたくさんおごってもらったのに、ひどい人間です。

教師は20代だろうが、60代だろうが、担任を持てばする仕事は同じですから、他の職業よりは平等意識が強いのかもしれません。


最後に、宴会について書いておきます。

働いていると色々な宴会があります。

忘年会や新年会はもちろん、決起集会やなんとか大会など、職員総出で出席する宴会です。

今、教師としても、昔、サラリーマンとしてもたくさん経験してきました。

サラリーマン時代ならば、ホテルでやるにせよ、居酒屋でやるにせよ、費用は会社持ちでした。
きっと、福利厚生費かなんか落ちているのでしょう。いわゆる経費です。

それが決起集会だろうが、忘年会だろうが、社員の持ち出しはないはずです。


じゃあ、教師の場合はどうなのでしょう?

教師の忘年会の経費は、教育委員会が払うのでしょうか?
各自治体が払うのでしょうか?
それとも各学校にはそんな予算が計上されているのでしょうか?

否、教師が払うのです。

教師はそのために各学校で毎月2〜3千円を積み立てています。
それを忘年会や送別会の費用として使うのです。その会ごとに費用を集める場合もありますが、ホテルや会場を借りてするような会は、その積み立て金から払います。

忘年会の費用を自分で払うのか!

と最初はびっくりしましたが、思えば当たり前のことで、そんなお金が税金から支払われるわけはありません。
私は知りませんが、きっとあらゆる公務員がそうなのではないでしょうか。


最近、公務員の共済がなくなり、社会保険と一本化されました。一つ公務員の利権が減ったのです。

共済の優遇ぶりは、メディアでも度々報道されてきました。一本化は致し方ないことかもしれません。

しかし、教師には接待交際費も福利厚生費もありません。福利厚生は互助会という財団法人や社団法人が担っていますが、所詮は積み立てた自分のお金ですし、さすがに飲み代までをカバーしていません。

接待交際費も福利厚生費もないならば、共済などの多少の利得はお許し願えれば助かりますが、公に奉仕する公務員ならば致し方ありません。


というわけで、年末年始、年度末年度始め、など、教師たちがあちこちで忘年会だの送別会だのをすると思います。もし、お見かけしましたら、

「ああ、彼らは自費で飲んでいるのか」

と温かく見守ってくださいませ。


教職員のみなさま、楽しいお酒を!