2012年9月7日金曜日

学力が向上すれば学力テストはなくなるか?

学力テストの本格的実施が再開されて2年、当初は参加しないと表明した自治体も参加し、することが当たり前になちました。

私の勤務する学校でもこの前から、結果の分析なるものが始まりました。

そもそも何で学力テストが復活したのかというと、ピザ調査での成績が悪いとかランキングが下がったと大騒ぎを始めたからです。

だれが?

もちろん、子どもたちではありません。親たちでもありません。ゆとり教育を推進していた官僚でもありません。


騒ぐと利益がある人たちです。


つまり、あの学力低下宣伝キャンペーンは、まず間違いなく学力テストを文科省から下請けしているベネッセコーポレーションやそこに天下った(天下りできそうな)官僚たち、利益を享受する御用学者たちの仕掛けが存在するはずです。

そうでなければ、あれほどテレビや新聞での横並びのような学力低下ニュースがあふれるはずはありません。

そもそもが座学だけできても、理屈ばかり達者でも、世の中では役に立たない、無個性な優秀さより、アンバランスでも秀でた能力を伸ばそうと始まったのがゆとり教育です。

決して学力調査の成績を伸ばすために始めたわけではありません。

言うなれば、「学力は下がってもかまわない、豊かな人生を送ろう」としたのです。

しかし、いつに間にか論はすり替えられ、学力低下が大問題になりました。ゆとり教育を受けた子どもたちが社会に出て、どんな活躍をするのか、誰も見ないうちに。誰も検証しないままに。

私はゆとり教育に賛成ではありません。総合学習なんて今すぐにでもなくしてほしいくらいです。
しかし、ゆとり教育が間違っていたかどうかはまだ分かりません。

スポーツで活躍し、世界へどんどん出て行ったり、オリンピックでは重圧を跳ね返してメダルを獲ったり、ボランティアに積極的に参加したりする「ゆとり世代」を目にすると、これから社会に出て仕事に慣れた彼ら彼女たちがどんな活躍をするのか、とても楽しみなのです。

にもかかわらず、世の風潮はそれを待たずに反ゆとりに舵を切りました。そして、真っ先に学力テストを導入したことが私としては非常に腹立たしいのです。

学力テストをいくらやっても学力は上がりません。誰だってテストをする前には勉強するのです。だからこそ、反ゆとりで行くのならば、まず学力を向上させるためにお金を使うべきです。教師を増やす、環境を整える、補習をする…やれることはいくらでもあります。学力テストは学力向上のためには優先順位が高くはありません。もうすでにピザ調査での結果が出ているのならば、それ以上調査しなくてもかまわないはずです。

ただ、予算を分捕り、仕事を増やし、いらぬ分析に膨大な人力とお金を使ういい口実にはなります。

いったい文科省はいくらでベネッセコーポレーションに学力テストを発注しているか、みなさんは知っていますか?

600億円です。
これは必要な600億円ですか?



だいたい、学力低下、食料自給率低下、就職率低下、年金納付率低下など、低下低下とやかましく大騒ぎになっている時は、誰かが仕掛けているのです。

食糧自給率低下を叫ぶ農水省は、低下を食い止めるために予算をくれと言っているのです。
就職率低下を叫ぶ経済産業省は、雇用を増やすために予算をくれと言っているのです。
学力低下を叫ぶ文科省は、学力を向上させるために予算をくれと言っているのです。
その予算を使って何をするかというと、無駄な財団法人を作って天下りポストを増やすのです。下請けの会社を肥えさせて、天下りの確約を得るのです。

では、学力が向上し、ピザ調査での成績が上がったら、学力テストはなくなるのかというと、私はそうは思いません。今、もうすでに文科省とベネッセコーポレーションは次の手を打っています。

それは、意識調査です。

意識調査は、平たく言えば、子どもたちの勉強に対するやる気や態度のアンケート調査です。

先生の話はしっかり聞いていますか。
毎日コツコツと勉強していますか。

そんな質問が何十個も続くような意識調査を現在すでに行っているのです。

なぜそんなことをするのか、というと、学力と意欲の相関関係を取りたいからに他なりません。

意欲がある子は学力が高い。
生活習慣が付いている子は学力が高い。

きっとそんな相関関係を想像ではなく、データとして取りたいのです。
もちろん、実際、取ることができます。

なぜなら、現在、意識調査がテスト問題を解いた後に行われているからです。つまり、テストを終えて「よくできた」と思っている子は自信を持って「先生の話をよく聞いている」に「あてはまる」と答えることができるのです。
「できなかった」と思っている子はどんなに普段先生の話を聞いていても、「先生の話をよく聞いている」に「あてはまる」とは答えにくいでしょう。

学力テストと意識調査を同時に、しかも問題を解き終えてからの意識調査は、かなりの誘導が行われるのです。

意欲や生活習慣と学力の相関関係なんて付いて当たり前なのです。ただデータを取るために行っているとしか思えません。

きっと近い将来、「学力を上げるには、モチベーションだ、生活習慣だ」と高らかな声を上げて、文科省とベネッセコーポレーションは大騒ぎをするでしょう。
もし、日本のピザ調査での成績が上がっても、次はきっと学力テストがなくなることはありません。

意欲や生活習慣と学力の相関関係を注視し続けることが大事なことだという論調が出来上がってしまっているからです。

ベネッセコーポレーションは、生活習慣改善教材でも開発するかもしれません。モチベーションアップのためのメンタルトレーニングコースも開設するかもしれません。


ゆとり世代と呼ばれる若者たちよ。

悔しいじゃないか。
世の中がびっくりするような活躍をしようじゃないか。
学力テストにあくせくする文科省を、
ベネッセコーポレーションを、世の中を、笑ってやろうじゃないか。